深夜3時、ラストプレーの結末に絶叫をあげてしまったラグビーファンはどれくらいいるのだろうか。
そして、試合後も嬉しさのあまり眠れずに過ごした人間の数も…
18日にイングランドで開幕したラグビーW杯。大会2日目に登場した日本代表は世界ランク3位の南アフリカを34-32で下し、24年ぶりのW杯勝利を挙げた。
…と、簡単に記したが、いちラグビーファンとして本当に信じられない出来事が起きたという気持ちでいっぱいだ。
体格差がそのままスコアに結びつきやすいため、ジャイアントキリングが生じにくいのがラグビーというスポーツの特徴だ。
ランキングでは10程度の違いでも、それを上回るのはとんでもないほど難しい。その難しさは業界関係者をもってしても適切な表現が見つからないくらいだ。
今回の勝利で目標は「24年ぶりの1勝」から「グループリーグ戦を突破しベスト8」に上方修正された。中3日のスコットランド戦、そしてパシフィック・ネーションズカップでしのぎを削ったサモアとアメリカ。
どのチームも難しい相手なだけに、気を緩めずに戦い続けてほしいところだ。
故に、この試合だけで日本代表を総括することは出来ない。なので、本稿は2点だけ僕が驚いた事を記しておこうと思う。
①組織的守備というサプライズ
映像を見た人の中には「選手たちの懸命なタックル」に心打たれた人もいることだろう。低く、早く、そしてキーマンには2人がかりで大男を倒す姿には、僕も手に汗を握った。
また、タックルした後に素早く立ち上がり、ディフェンスラインを再度組み直す姿も好感を持てた。力でねじ伏せようとした南アフリカの選手たちにとって、どこに走ってもスペースが無いというのは想定外だっただろう。
しかし、実を言うとこういう「組織的な守備」は今までのエディジャパンでは「課題」とされてきた部分だった。
「アタック・シェイプ」といった連続攻撃の戦術は成果を挙げていたが、その一方で守備の部分ではムラの多い試合も多々あった。それなりのルールは有ったと思うのだが、結局は個々人の能力や判断に任せがちだったと言えよう。
それがこの試合では、先にも述べた通り選手たちは組織的かつ連動した守備を見せ、致命的なミスは最低限に抑えたのである。
テリトリーもボールポゼッションも6:4で南アフリカ優位だった。この条件で五分五分の試合展開に仕上げたのは、最重要の局面で最大限発揮された守備力だったのである。
②ラグビーファンの視線は変わるのか?
ラグビーW杯は日本のラグビーファンにとって苦難と苦痛の歴史だった。
145失点で不名誉な敗戦を喫した95年、青年指揮官と共に挑むもトライが殆ど奪えなかった99年、気合の入ったディフェンスで挑むも息切れした03年、4年間で4度の指揮官交代の末に挑んだ07年、着実に実績を上げるも大会が進むごとに白け具合が表面化した11年…
古参、新参関わらず、上手くいかないラグビー日本代表へのストレスは溜まっていった。
その結果が過度な自傷行為を繰り返すラグビー関係者を多数生み出してしまったのである。
そういった人々との戦いも色々としてきたが、やはり正義対正義の戦いは疲労を生み出すだけで無意味な部分が多かった。今のスタンスは人の意識云々の前に、自分が楽しいと思う事を素直にし続けようという事に尽きる。
しかし、ラグビー日本代表は24年ぶりに勝利を収めた。
しかも、南アフリカ代表を破るという驚異のサプライズを起こして。
エディジャパンは記録と記憶の両面から、自傷行為の原因となった箇所に薬を塗ったのである。
口の悪いラグビーファンは多分、何をしたって一生変わらないと諦めている。
ただ、今は多くのラグビーファン、あるいはラグビーを知った/興味を抱いた人間が目線を、過去の暗い思い出や未来に対する過度の不安ではなく、今に向けてくれている。
そういった人々に対して、僕自身も「今、そこにあるラグビーの魅力とは何か」を伝えていきたいと思っている。
そして最後に一言。
完全にと言うのは難しいのかもしれないが、W杯にて苦難の結果、後悔、罪悪感を背負ってしまった多くの関係者(運営者、指導者、選手etc…)に対しても、この1勝がささやかな赦しと癒しになって欲しいと願っている
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てなわけで、強敵や難局に挑んだラガーマンの活躍も収録中の拙著もよろしくね♪
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