2014年1月24日金曜日

「伝統」が何かを痛感した ~中央大学ラグビー部・2013シーズン総括~




41年ぶりのワクワク感


「古豪・中大」「伝統校・中大」。
そんなフレーズが優勝決定戦を前に溢れていた。
とは言え、どうもピンとこないフレーズでもある。
少なくともこの10年は、強い歴史とは無縁の日々だった。
そして、41年間も歓喜とはかけ離れた歴史を築いていたことに、ある意味愕然するしかなかった。




「大逃げ」と「逆噴射」


大学ラグビーシーズンの序盤戦で話題をさらったのは、間違いなく中大である。
大東大戦でしぶとく勝利を収めると、事件は次の東海大戦に起こった。
中大の「大逃げ」が始まった瞬間である。



粘り強い守備は個々のタックルはもちろん、「しっかりラインを形成し数的有利を崩さない」組織的な側面もあった。
敵陣でペナルティを得ると、スーパーブーツ浜岸のPGで着実に得点を重ねる。
彼と羽野のロングキック砲は、陣地獲得に大きく役立った。
攻撃のチャンスは少なかったが、しっかり外に展開すれば高や藤崎といった好ランナーが待ち構えている。
今までならばポロリもあったが、この日はノーミスでトライに結びつけた。
【23-14】という点差以上に、チームが得た戦い方、何より刺激と自信は大きいものだった。

立正、法政、拓大戦も守備力を活かして勝ち切り、5連勝。
そして、冒頭の優勝決定戦へ臨むのである。

だが、「逆噴射」への転機はこの流経大戦だった。
ここまで踏ん張ってきたFW陣で後手を踏み、0-25の完敗。
それだけでなく、4年生唯一のFWだった藤原やスーパーサブ・住吉も戦線離脱。
次第に暗雲が立ちこめてきた。


滾るには程遠く…





日大戦も反則過多が祟ってよもやの敗戦。
抜群の統率力でチームを率いた山北主将が、負傷の影響もあり途中で退いたのも痛かった。
明らかにチームの勢いは衰えていた。

しばしの休息の後、迎えた久々の大学選手権。
「連勝し、早大を破って国立へ」。
そう意気込むチームに待っていたのは悲劇だった。
攻守ともに組織的に戦えてはいた。
しかし、山下楽平という強固な個の前には無力だった。
後半40分、ホーンが鳴った後に決められたトライとコンバージョンゴール。
メンタル面で強くなっている――リーグ戦の時はそう確信していたのだが、大舞台で見せたものは「中大ラグビー部・負の伝統」そのものだった。



「滾る中央」。

優勝決定戦で打ち出されたキーワードだ。
「滾る(たぎる)」とは「激する気持ちが盛んにわきおこる。わきあがる」という意味の言葉だが、残念ながら最も重要なこの5試合で見せた姿は「滾る」とは程遠いものだった。

確かに大逃げで「大学選手権に出られなかったら」「入替戦に回ったら」という不安は無くなった。
しかし、初めて経験する「勝たなければいけない」という気持ちの高ぶりが、マイナスの方向へ向かってしまったのかもしれない。
逆噴射後の戦いは、メンタル面はもちろん、フィジカルや戦略面でも大きな課題を突きつけられるものだった。

大体大戦は粘り強いラグビーで久々の勝利を挙げたものの、早大戦は終始苦しみながら敗れた。
最初の5試合よりも、ラスト5試合の方が「中大の現状」を表している気がしてならない。


改革が伝統に変わる時


とは言え、山北組が築き上げた改革の成果は大いに評価されるべきだ。
「プレッシャーを与えるディフェンス」こそが中大ラグビーの核であり、来季も起点となるものである。
ピッチ外の諸活動も、ファンを大いに喜ばせるものだった。



だからこそ、今最も大事にしなければならないのは「継続」である。
この10年間で大学選手権に出た年はあった。
しかし、チーム力の向上や選手個々の能力の向上は上手く引き継がれず、下向きの緊張感が繰り返され続けた。

2013年、良くも悪くも刺激的な1年だったからこそ、「もう一度!」という意気込みはピッチ内外に溢れている。
名ばかりの「伝統」や悪い意味での「伝統」では無く、結果と記録をしっかり残している、良い意味での「伝統」を築き上げたい。
そう思っている関係者は少なくないだろう。

2014年の目標は、まずはここ最近成し遂げられていない「2年連続の大学選手権出場」である。
そこから「伝統」へのリスタートは始まる。
それすら成し遂げられないようならば、山北組の努力や熱は全て水泡と化したと、厳しく評価せざるをえない

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