2015年11月16日月曜日

【ラグビー】チケットはどこに消えた? ~トップリーグ・空席問題を巡る個人的雑感~


前のエントリーに掲載した写真と比べてみましょう…

熱気あるラグビー・トップリーグ開幕戦……といきたいところだったが、残念ながらチケット騒動で冷や水を浴びてしまった感は否めない。
しかし、これはいち組織の責任というよりも、「チケットを取り巻くパワーバランス」の問題が大きいのではないだろうか?

事の詳細は既に多数のメディアで報道されているので、ここでは割愛する。

ラグビー空席、原因は見込み違い 企業割り当て分9000枚「5割しかさばけず」(デイリースポーツ)

これらの記事で驚いたのは「企業購入分が一般販売分よりも4000枚も多いとは!」という事だろう。一般販売分に年間パスポートや回数券などを加えても、企業配布分との割合は1:1である。
「協会は企業動員を優遇するばかりで、ラグビーファンに冷たいのでは?」という意見も聞こえてきそうだ。だが、ラグビーファン、特にコアなラグビーファンがどのような経路でチケットを入手しているかを考えると、この問題は複雑な様相を帯びてくるのである。

まず、トップリーグを観るために用いるチケットの種類をここで大まかにまとめておきたい。

一般販売:いわゆる一般的な観戦チケット。自由席前売り1,350円より
・回数券:自由席が対象。5枚一組で5,500円なり
・年間パスポート:トップリーグ全試合が見れる。18,500円なり
・招待券:新聞社やJRFUメンバーズクラブが配布しているもの。自由席がタダ
・企業が所有するチケット:チームが協会より購入し、それを元に社員・関係者を動員する

今回の秩父宮の件では、一般販売分が完売し、更に招待券での入場が抑制される一方で、企業所有分のチケットが余ってしまいスタンドに空席が目立つ結果となってしまった。
また、回数券や年間パスポートでの入場は認められていたが、使えないと勘違いして来なかったファンもちらほらいた模様である。(サイトでの案内を見る限り、特段不親切なものでもないとは思うが、「これらは使えます」と追記しても良いのでは)

次はミクロな視点で、ラグビーファンたちがどのような経路でチケットを入手しているか考えてみたい。ここに「一般販売分が少ない謎」が隠れていると私は踏んでいるからだ。

①私の場合について
私は某大学の応援がラグビー観戦の中心であるため、トップリーグに割ける時間は年間5~10試合の間である。そう考えると、まずは回数券を購入し、そこからスタンプラリーやJRFUメンバーズクラブ(3枚が1年間有効)の招待券を併用して観戦している。これで充分間に合うし、友達を誘う事すらできる。一般販売窓口を使うのは年に1回か2回あるくらいだろうか
※今年はトップリーグをあまり見に行けない予定なので、久々に一般販売窓口を使って開幕戦のチケットを購入した


②コアなラグビーファンについて
毎年多数の試合を観戦し、かつ贔屓チームが無い、色々な試合を見たいという人は年間パスポートや回数券派が多数だろう。
その一方で、贔屓チームがある方はファンクラブ経由でチケットを入手するケースが多い。そう、このファンクラブがなかなかくせ者なのである。

トップリーグ全チームのお得なファンクラブをまとめてみたよ!

上記リンクでまとめられているように、年間数千円の会費で様々な特典を手に入れる事ができる。特にチケット関連では「全試合無料」を謳うチームも存在する。これならば一般販売窓口を用いなくとも、楽しくお手軽にラグビー観戦ができるだろう。


③企業動員について



サントリー側の証言によると、チケットはチーム(企業)が購入し、様々なかたちで配布されている模様だ。手段は無料・有料のケースはあると思うが、とりあえずこの方々が一般販売窓口を用いることはあり得ないだろう。





ここまでまとめて、多くの人々は気がついたことだろう。

一般販売窓口なんて使う機会無くね?

そう、コアなファンも企業動員の方々も、一般販売窓口で買うケースなんてレアなのだ。
ケースがレアだからこそ、運営側もそんなに枚数用意してないし、まず企業所有分が多数捌くことを考えているのである。

ところが、W杯効果でラグビーに注目が集まり、そのレアな窓口に多数の人々が殺到してしまった。(一番わかりやすい窓口だからそりゃそうだ)
色々工夫して枠を最大限広げたつもりだったが、一番数を有している部分においては、協会とチームとの思い込みで「消えたチケット」を多数発生させてしまった。機会損失であり、非常に勿体ない話である。
今後は協会とチーム間での連携を強化し、徐々に一般販売用のチケットは確保されていくことだろう。だが、仕組みは今のままで良いかと言われると、やはり疑問が残る。

「ラグビーに興味を持ったライト層」は、「一般販売窓口」でお金を払う。また、コアなラグビーファンの中には、年間パスポートや回数券でお金を払う。しかし、これまではその数がブームの力を借りても最大8000程度にしか達していない事が明らかになってしまった。
チケットの半分は企業のものだ。それを知ってますます企業動員に批判的になるファンがいる一方、企業のサービス(=ファンクラブなど)に頼るコアなファンもいる。
非常に多面的・多層的なチケット事情を見ると、何を「悪」として断罪する事はなかなか難しい。

結局、「コアなファンにお金を使わせる」「ライトなファンにわかりやすく売る」というベタな発想に基づいて、最適なチケット販売モデルをつくるべきとしか言えない。そして、チケットの販売者を集権(協会中心)にするか分権(チーム中心)にするかが問題解決の焦点になる。
ただ、「協会側の運営に限界を感じる」やら「ラグビーというコンテンツに継続的にお金を払ってもらう」ことを考えるのであれば、分権型のモデル(=興行権をチームに移管する)に力を移していくのが良いと僕は考えている。バスケットボールでも似たような試みが行われている。(※ただし、この試みを継続する前に色々あって、リーグは来年よりプロ化していくのだが)

チケットで言うと、協会は年間パスや回数券の販売に特化し、いわゆる「一般販売分」はチームに委ねていくという流れだ。もちろん、「ホーム&アウェイではない」「特定のチームを贔屓せず、フラットに試合を観る」という日本のラグビー文化においては、様々な溝があるというのも理解しなければならない。

今回はチケットの問題に絞ったが、ラグビー界を取り巻く「お金に対してわりと無頓着」なカルチャーを是正しなければ、今のブームは文化にならずに終わるだろう。それは売り手はもちろん、買い手も考えなければならない話だ。W杯のチケットなんて、国内のあらゆる試合よりもべらぼうに値段が高いのだ。
今節以降は一般販売窓口で買えるし、いわゆるタダ券も堂々と使える試合が増える。ただ、ラグビーを盛り上げたいと意識しているのならば、タダ券はなるべく誘ったお友達に渡し、自分は一般窓口でチケットを買うのがベターではないだろうか

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