2016年2月11日木曜日

【ラグビー】僕がサンウルヴスに「勝利」を期待していない理由



今年より南半球最高峰のプロラグビーリーグ、「スーパーラグビー」に日本からチームが参戦することになった。その名もサンウルヴス。昨年脚光を浴びたワールドカップの勢いそのままに、日出ずる国の狼が牙をむく…

と、意気揚々と書きたいところだが、現状を考えると不安も一杯だ。苦しい船出の予感、その一方で掲げられている大きな理想。この二つを掘り下げていくと、「初年度のサンウルヴス」が担うべき新たな役割が見えてきた。


厳しいチームビルディング


サンウルヴスの初年度スコッドを初めて知ったとき、ある程度は覚悟していたことだが「厳しいな」という印象を抱いた。
日本代表選手が多数参戦しているとは言え、主力として絶対的だったのは堀江や立川、山田くらいだろう。リーチ、田中といった昨年もスーパーラグビーに参戦していた選手はもちろん、五郎丸、畠山、松島、サウ、山下らもサンウルヴスとは異なる海外チームを選んだ。

当初からチーム編成の遅れが叫ばれ、エディ・ジョーンズがディレクターを辞した後は「参戦見送り」という報道もあった。チームができただけでも良し! という見方も出来るが、やはりもどかしい。
また、外国籍選手も個性的なプレーヤーが多いが、スーパーラグビーの経験値を考えると心許ない。カーク、フィルヨーンも一線級とは言い難い。レベルズの初期を支えたスタンリー・モートロックのような選手が居れば良かったのだが…。

以上のことから、サンウルヴスの陣容は参戦18チーム中「最もナメられかねない」と考えて良いだろう。マーク・ハメットHCの猛特訓でチー無力を上げたいところだが、こちらも時間不足であまり期待できない。

サンウルヴスに勝利を求めるのは厳しい。「勝利」で感動を呼んだエディ・ジャパンとの落差に、多くのファンが苦しむ可能性がある。これは覚悟しなければならないだろう。

そんなチームに、果たして我々は何を期待すれば良いのだろう?




「文化」にするための担い手


サンウルヴス関連の記事を読んでいると、こんな言葉と出逢うことがある。

「ラグビーをブームから文化にするための第一歩だ!」

ワールドカップで多くの人々がラグビーに目を向けてくれている。しかし、このまま人気に胡座をかいているとすぐに冷めてしまうだろう。だからこそ、プロラグビークラブのサンウルヴスの活躍と成功がラグビーを国内で「文化」に変えなければならない。

要約すると、そんな感じだろうか。
ここでふと思う、「ブーム」と「文化」の違いって何だ? と。

日本国内で文化と表しても過言ではないスポーツは何だろうか。ざっと思いつくのが野球とサッカーである。両者ともプロリーグを持ち、世界的なレベルで見ても上の下や中の上くらいの力量はある。
この2つの側面で言えば、ラグビーも野球やサッカーに追いつきつつある。代表のレベルは一昔前より一段進歩し、サンウルヴス発足で「プロチーム/プロリーグ」という要素も何とか満たせた。この調子でいけば「文化」は根付けるはず…。
なのだけれども、不安を抱くラグビーファンは多い。そこにあるのは「負けたらどうしよう」という強迫観念だ。

確かに、五輪でメダルを獲得したとか、世界一になったなどで、一時的にその競技が脚光を浴びる瞬間もある。そして、それらの競技が敗れたり、期待に沿えない結果を残した瞬間から忘れ去られていく様も、コアなスポーツファンならよく知っていることだろう。
このように、勝つことでブームを生み、敗れることでブームが終わるのが昨今の日本スポーツ界なのだ。そのフェーズを、今ラグビーというスポーツは綱渡りで歩んでいる。
そう考えると、サンウルヴスの参戦は(今までと比べるとありがたい状況な!)ブームを終わらせてしまう可能性もある。現状を考えるとますます憂鬱にならざるを得ない。

では、永遠に勝ち続けていれば文化になるのか? これも正しい答えではない。
世界選手権や五輪で○連覇という競技もあるが、必ずしも野球やサッカーのような「文化」をイメージし難いものもある。また、相撲は「国技」というべき文化ではあるが、国際競争とは無縁…いや、外国出身力士があれだけ勝ち続けているくらい国際競争では遅れをとっている。なのに、「文化」ということができる。
果たして、「文化」と呼ばれるスポーツには何があるのだろうか?

「文化」と「ブーム」を分けるものは何か。ここで僕なりの仮説を打ち立ててみようと思う。
それは「弱いチーム」を応援してくれる人々がいるスポーツは「文化」にたどり着ける…というものだ。




例えば野球の場合。去年最下位だった横浜某所のあるプロ野球チームは、着実な営業努力もあり観客動員数を3年で42%増やした。「強い=文化」であればこの現象は説明できないだろう。

例えばサッカーの場合。代表やJ1といったトップチームの活躍はもちろん、全国津々浦々にサッカークラブはあり、カテゴリーに関わらず「好きなチームをサポートする」文化がある。サポーターの多様化はますます進んでいきそうだ。

もちろん、これらのファンやサポーターも代表の試合で一喜一憂し、がっかりすることもあるだろう。しかし、それが競技そのものへの縁を切るだとか見向きもしなくなるとったことにはならない。

このことがとても羨ましいのだ。大抵のラグビーファンは強いチームにあこがれ、その強さに依拠するかたちでラグビーファンになっている。故に、それらが弱くなった瞬間、手のひら返しも厳しい。最近「伝統校許すまじ」なる論調も出ているが、その過去の強さに皆で依存していて何を今更…とも思う。

そう、そんな風土だからこそ、サンウルヴスは今まで生み出せなかった「弱くても応援したい人」を増やせるチャンスなのだ。こんな機会はもう現れないと思う。

故に、勝つことを期待させたり、煽ったりしてはいけない。弱いなら弱いと認め、弱いからこそ素直に「支えて下さい」と訴える。そんな開き直りから、日本ラグビーの文化への道は開けていくのではないだろうか。


☆個人的に応援したい人々


1年目からマーク・ハメットHCを成績という物差しで語ってはいけない。チーム立ち上げの苦しみを知っているからこそ、サンウルヴスの役に立ちたい。この文言を導き出せただけで合格点だ。個人的には2年目までは暖かく見守りたいと考えている。



サンウルヴスの発足とともに、垣永真之介のキャラクターが立ちつつある。お披露目会見での謎の絶叫。「えーほうこうへと進めば良いですね」という名言…。
どんなチームにも必ず暗黒時代はある。そして、暗黒時代の中でも何故か輝ける選手が居る。そんな選手の共通点に、何故か垣永は当てはまっている。
これは応援せざるを得ないじゃないか。もちろん、そこには「次世代の一列目を支えて欲しい」という願いも含まれているのだけれど…

===============

ラグビー選手になりたかった
ワラサンスポーツ出版 (2016-01-08)
売り上げランキング: 9,070

好評発売中です!

0 件のコメント:

コメントを投稿