【試合寸評】○リコー 25-20 キヤノン●
前半のリコーは向かい風もあり、スクラムとディフェンス以外は散々。
ただ、ディフェンスが良い感じで機能しており、フルーティーとタマティが大外のランナーをなかなか走らせなかった。
キヤノンにとっては誤算の展開だったが、トエアバや三友を中心に個々のプレーの質はまだ落ちていなかった。
野口のトライシーンより
しかし、後半の30分間で明暗が分かれる。
いつもは試合運びが下手なリコーだが、この日は違った。
引き続き守備でリズムをつくると、攻撃も徐々に躍動。
河野らのキックで相手を背走させ、陣地を回復しているうちに、次第に思い切りの良い攻めが出来るようになった。
特に「スクラム強さ」はリコーらしい「縦への推進力」を一層強めさせた。
私的MOMは長江を推したい。
フルーティーのDGもゲームの中では大きかった。
キヤノンはハンドリングエラー多く、無理なプレーが続いたのが残念。
トエアバも決定機はつくれず、少しメッキが剥がれてしまったみたいだった。
大外を封鎖せよ
この勝負の分かれ目は「ディフェンス」、特に外側の攻防で決まったと思う。
東芝戦、パナソニック戦共に、キヤノンは展開する際は丁寧に大外のWTBまで回す事が多かった。
トエアバで火を付け、三友・ベネットの「技巧派」がそれを後押しすることで、相手ディフェンスを翻弄し、数的有利をつくりだす。
非常に洗練されており、かつ綺麗な攻撃だった。
シンビンは残念だったが、渡邊は今後も攻守のキーになりそうだ
CTBやWTBにボールが渡っても、フルーティーとタマティの両センターがしっかりマークする。
もちろん、渡邊と星野も良いタックルを何本も見せていた。
ピンチの時間は長かったが、タッチライン外に追いやられるキヤノンの選手を何度も見ているうちに、不安は次第に無くなっていった。
リコーは選手個々のポテンシャルはあるものの、チームとしては勝負弱く、ファンを無暗にドキドキさせるチームである。
そういう前提から考えると、今日の守備は非常に「意志疎通をしっかりする」という意図が見られた。
個性をまとめて、組織的に動けるか。
それがリコーの進化を考える上で、重要な要素になるだろう。
ラストプレーの地響き
「複写機ダービー」と謳われた事も有り、秩父宮ラグビー場には9,800人もの観客が集まった。
相変わらず「所詮動員…」とシニカルな事を言いたがる方もいらっしゃるが、私が居たリコー側の観客は、そんな事お構いなしだった。
にこやかに試合を眺め、コールリーダーのシンプルなチャントに声を合わせる。
「勝敗」や「善悪」とは関係の無い、ただただ「楽しい空間」。
去年から「おっ!?」と思う部分はあったのだが、近づけば近づくほどポジティブな発見が見つかっている。
「応援」で印象に残ったのはラストプレーだった。
攻勢を強めるキヤノンが、敵陣22mライン付近でスクラム。
点差を7点以内に縮め、勝ち点を何とか奪いたいところ。
リコーもシンビンで数的不利の状況とは言え、試合で勝つのは決定でも、このシーンは「負けられない」ものである。
スクラムをまでに、少し間が生じた。
コールリーダーが声を発する。
最初は小さめだった拍手が次第に広がっていく。
それは次第に重なっていき、重い地響きへと変化していったのだ。
トップリーグの試合でこういう地響きを経験したのは、初めてかもしれない。
「偉そうに文句を言うだけで、アクションを起こす姿勢を見せない」。
そういう一部のラグビーファン(≠動員の人たち)の姿に、自分は反発する事も多かった。
しかし、東京セブンズのポルトガル戦や先のウェールズ戦などを見ていると、意識的に「小さなアクション」を繰り返していけば、スタジアムの雰囲気はポジティブになっていくし、それがラグビーでもできる事が分かった。
そもそも、ラグビーファンの「応援に対する姿勢」には、サッカーや野球には無い独特の感覚があると思う。
これらをまとめ上げていき、「ラグビーファンの文化」をつくりなおしていけば、寂しいスタジアムの時代も終わらせる事が出来るのではないだろうか。
さて、肝心の「地響き後」のプレーであるが…
残念ながら、あっさりトライと勝ち点を奪われてしまった。
あの地響きが選手達に届いて呼応するには、まだピッチもスタンドも一層の努力が必要という事なのだろうか…
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