2013年11月14日木曜日

存在の証明 ~トップイースト第7節 横河武蔵野アトラスターズ対日本IBMビッグブルー~




釜石シーウェーブスを破った横河武蔵野って、本当に強いの?


今年は相模原と釜石で順当だろうと思われたトップイーストに、思わぬ事態が発生している。
その立役者が横河武蔵野アトラスターズ。
歴史あるラグビー部であり、2008年には初めてトップリーグに昇格した…ものの、1年で降格。
以降は強化縮小や暴言事件によるリーグ戦辞退など、不遇の時期を過ごしている。

そんな横河武蔵野に、再び光が差してきた!
昨年久々に試合を見たが、ミスが少なく、シンプルなプレーを繰り返す姿は、非常に好印象だった。
とは言え、昨年と今年で選手補強や練習環境などで大きな変化は無い。
そこで冒頭の疑問にぶつかった訳である。

トップイースト第7節・横河対日本IBM,の試合を観に、三鷹にある横河電機グラウンドに足を運んだ。
相手の日本IBMもトップリーグ降格後は強化縮小の憂き目に合うなど、シチュエーションは横河と似ている。
頂いたパンフレットを開いたところ、こちらの総部員数は24名。
移籍組も多いが、そこにはちょっとした「苦労人」感も漂う。
この試合での登録メンバーは22名。
ちなみに、後で知ったことなのだが、背番号18の「山田晋司」さんはこのチームの監督である。





正確かつ執拗なパント攻撃

序盤から横河が攻撃で畳みかけていくものの、IBMの粘り強いディフェンスの前にテンポが掴めない。
自分の予想に反し、試合はIBMのペースで進んでいった。
次第にSO日永田のハイパントが次々と決まり、てこずっているうちに横河は彼らの術中にハマってしまった。
ボールキープで言えば、五分五分の展開だったと感じる。
ただし、IBM BK陣のパスの精度が低く、トライに結びつかなかったのは、後々の事を考えると痛かった。

後半も暫くはIBMペース。
激しいブレイクダウンとカウンターからチャンスをつくり、一時5点差まで迫る。
特に後半早々に畠山が決めたインターセプトからのトライは、横河の展開方法を完全に読み切っていた、素晴らしいプレーだった。
と、ジャイアントキリングの予感は高かったのだが、それが続いたのは結局ここまで。
フィットネスとゲームメイキングで優る横河が、最後は圧倒して幕を下ろした。



那須のスピードには光るものがある

横河の展開攻撃は今年もシンプル。
順目に展開を繰り返し、少ない手数で数的優位をつくる。
IBMのディフェンスが前へ前へと押してきたこともあり、テンポが出るまで時間がかかった。
が、FW戦で優位に立ち、この日3トライの西やSH那須などのスピードスターを上手く乗せられれば、迫力もなかなかのもになる。
今日は個の力で押しきった感はあるが、不利な局面から立て直して盛り返せるのは、やはり基本的な土台がしっかりしているからであろう。

トップリーグ降格後、大駒と呼べる選手は少なくなったが、大学時代に「好素材」と呼ばれた選手をしっかり育て、一人前にしている。
そして、彼らの特徴に合うラグビーを落とし込み、ミス無くピッチで遂行する。
ともすれば、トップリーグのチームでも、これを成し遂げているのは少ないのかもしれない。
ムリ、ムラ、ムダの無い現実的なラグビーが、思わぬ上昇気流に乗って、トップチャレンジに挑戦する…これはこれで夢のある話ではないだろうか。



でも、今日は横河を苦しめ続けたIBMの戦いぶりを、大きく称賛したい。
横河武蔵野よりも圧倒的に劣る資源の中、パントによる陣地とボールの獲得とブレイクダウンにひたすら活路を見出した。
特にサードローの選手たち…PRからコンバートされた佐藤、急きょ現役復帰した高、バイスキャプテンの下瀬の3名…は痛いプレーを嫌うこと無かった。
最近こういうタイプの日本人選手いないなあと思っていたが、トップイーストにいる! …という事を声を大にして言いたい。




ビッグブルーは、結果的には無力ではあった
だが、決して無抵抗でも無気力ではなかった。
だからこそ、胸打たれるものがあった。




トップリーグから降格したものの、両チームはそれぞれ生きる道を探して、必死にもがいていた。
そして、横河武蔵野はトップチャレンジ圏内、IBMは先の秋田戦で2年ぶりのトップイースト勝利と、結果を残しつつある。
三鷹の小さなグラウンドで見せつけた彼らの生き様は、もっと多くの人に知られて欲しい…それを証明するには相応しいゲームだった

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