2013年10月2日水曜日

ショウ・マスト・ゴー・オン ~関東大学ラグビーリーグ戦 中大対東海大 試合雑感~




何でこんなことになってしまったんだろう???



試合終了の笛が鳴り、周囲の人たちと共に歓喜を爆発させる一方で、冷静なもう一人の自分はこう訴えかけていた。


スポーツの世界はリアリティで満ち溢れている。
フィクションでありがちな「ベタで素敵なサクセスストーリー」は滅多に現れることは無い。
長くチームや試合を追い続けていれば、なおさら「落としどころ」もわかってしまう。
乞おうが願おうが、シナリオどおりにはいかない…


強くなることを望めないあるスポーツチームに、ある日突然「空気を変えるきっかけ」が飛び込んできた。
それらと試行錯誤をしていくうちに、チームは快進撃を続ける…


こんな少年漫画みたいなストーリーを、僕は信じることはできない。
起こるはずは無い、起こったとしても、僕とは関係の無い世界の話…
でも、スタジアムの電光掲示板が映し出すスコアは、【23-14】のまま、ずっと変わることが無かった。



【関東大学ラグビーリーグ戦 試合寸評】
○中大23-14東海大●
私的MOM…浜岸(中大 SO)
その他注目選手…山下(中大 FL)、羽野(中大 FB)、長谷川(中大 SH)、湯本(東海大 SH)

下克上の呼び水は激しく組織的な守備。
中大は前半から東海バックスリーを徹底マークし、数的優位をつくらせず。
相手の激しいブレイクダウンとモールに押され、先制トライを奪われるも次第に適応。
浜岸のPGをコツコツ積み重ねて、9-7と逆転に成功する。

圧巻は前半終了間際の高、そして後半開始直後の羽野のトライ。
両者とも東海の「乱れやすいディフェンスライン」の裏を狙ったもの。
特に羽野のトライは、攻撃ラインをしっかり敷き、しぶとく左右にボールを動かしながら数的有利をつくった「崩したトライ」なだけに、非常に価値が高い。

MOMはやっぱり浜岸。
東海の選手を焦らせるには十分な、見事な試合運び。
長谷川の落ち着き、山下のジャッカル、羽野のランもお見事。
東海は湯本投入後はテンポが出たが、焦りでラストプレーの雑さも目立った。




落ち着いていた試合運び


嫌な展開も我慢できるようになってきた


大学ラグビーでありがちな事に、「少し苦境に立たされるとチーム全体がパニックになる」というものがある。
我らのラグビー部も長年この現象に悩まされており、数々の劇的な逆転負けを目の当たりにしてきた。

しかし、大東大戦でもそうだったが、この2試合でのゲームメイクは素晴らしいの一言に尽きる。
攻める時、守る時、嫌な流れを断ち切る時、盛り上がる時、逃げる時。
この試合でも後半30分過ぎにPGを狙わなかった事以外は、殆ど「?」と思うプレーは無かった。
試合の時間の中でメリハリをつけ、各々が自分の役割を全うする。
真面目さが光る長谷川や、ムードメーカーとして盛り上げる井坂らを見ていると、役割とバランスの調和が良い事が伝わってくる。

また、セットプレーやディフェンスの成長は勿論、ノックオンやスローフォーワードなどの「ポカ」が少なくなったのも目を見張るものがある。
基本的なプレーレベルが上がったからこそ、BK陣の多彩な攻撃も独りよがりでは無く、説得力が増している。

「強くなってきている」という事については、間違いない。
更に試合を重ねていった時、どのような姿を見せるのか…伸びしろはまだあるはずだ。


シナリオ通りに進むのか?




「中大が東海大に勝つ」という首脳陣が書いたシナリオを、中大の選手たちは素直に、かつNGなしで演じきってしまった。

僕が試合後に抱いた不思議な感情は、こういうものだと今は思っている。
痛快で面白いストーリーである一方、「今後どうなってしまうんだろう?」と先が読めない展開にやきもきしている。

起承転結で言えば、今は「転」の部分に入ってきているのではないだろうか。
「転」の部分をどう描き、演じるかによって、ハッピーエンドかバッドエンドかは変わってくる。

上柚木公園陸上競技場。
中大ラグビー部は昨年まで、この舞台では無敗だった。
しかし、昨年の最終戦で初めて敗れ、大学選手権の切符をも失ってしまった…

新しい展開を進めるには、またもってこいのシチュエーションである。
試練の5連戦の最終戦、コンディションは厳しい状況である。
しかし、このチームが「面白い演芸一座」になりつつある以上、幕が降りるまで精一杯演じきって欲しいのだ。
演じられるだけの実力があると気が付いたからこそ、ますます思うのである。

そんな芝居をハラハラしながら、そして気を引き締めつつ、僕も楽しんでいきたい

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