2014年11月10日月曜日

【前編】余熱の先にあるもの ~高等ラグビー東京都予選 第1地区決勝 国学院久我山対成城学園戦~


熱戦が行われた試合会場では、その後に行われる試合も熱戦になる。
それはカテゴリーや立場を超えておこる、不思議な傾向である。

11月8日の日本対マオリ・オールブラックス戦は歴史的名勝負だった。
しぶとい守備で相手の反撃を抑え、残り5分で逆転のPGを決めたジャパン。
しかし、マオリのカウンター、そして執念のクイックスローからの展開攻撃に沈んだ。
18ー20という試合結果はジャパンにとって残酷なものだったが、勝敗を超えた感動がスタジアムには広がっていた。

…その試合当日、諸事情で私は泣く泣く本業のオフィスにいた。
録画を見終えたあと、その悔しさや恨めしさが色々と混ざった末に、冒頭の格言を思い出し、実行に移すのであった。

結論から先に記すと、両者とも5点差以内での敗戦だった。まず、僕の予想は的中した。
そして、得られた感動は予想以上だった。
それは余熱ではなく、新たな熱源だったのかもしれない…





実を言うと、高校ラグビーを現地生で観るのはこの日が初めてだったりする。
まずはラグビー系メディアの記事や花園のTV中継での印象、あとは卒業生のプレースタイルから辿り、展開を少し想像してみる。

第1試合は國學院久我山対成城学園。前者は昨年久々に花園の舞台を逃し、捲土重来のシーズンである。
一方、後者は勝てば初めての花園行きとなる。ラグビー的には無名の存在だが、高校日本代表候補もおり、チームの充実ぶりも伺える。
常連校対新参校の構図ではあるが、勝った暁には、両者ともフレッシュな気持ちで花園に臨めそうである。




久我山と成城との間には、個の力は相当広がっている。FWの体重では10kgも差がある。成城が粘っても、久我山が力で押し切ればどうしようもないな・・・
その考えはファーストプレーで崩れた。久我山が難なくボールを外側で展開。次の瞬間、ドスン!という鈍い音がスタジアムに響き渡った。成城のねばり強く、低いタックルがこの試合のキーだった。


久我山の出足は最高だったのだが…

前半7分に素早い展開から大外の市村に回った時は、ワンサイドゲームになると思っていたが、次第に久我山は成城の術中にはまっていく。
狙いを定めてダブルタックルを決め、3人目が素早くラックに突っ込む。この繰り返しに久我山は手を焼いた。効果的なボール供給ができず、根負けしペナルティを何度も与えた。
前半23分に成城は守備の隙を抜け出した丸山がトライ。両者この1本のみで前半を終えた。



後半はより一層熾烈な戦いになった。攻めるもスピーディーに前へ進めない久我山。強烈なタックルで何度もピンチを脱する成城。
スタジアムの雰囲気も次第に、健気に頑張る成城の味方になっていた。

ただし、敵陣が遠く感じたのは成城だっただろう。
1本のトライ、いや、1本のPGでも、成城にとってはセーフティーに近い点差だった。
それくらい今日の成城はハマっていた。だが、攻撃に自らの力を投入することができなかった。

試合終了も近づいた後半30分、成城はペナルティを与えてしまう。ややバックスタンド寄りの厳しい角度だったが、久我山の選択肢はタッチではなくPG。
成城が攻撃でしたかったであろう選択肢を、久我山はチョイスした。




サヨナラPGをきっちり決められるというところに、国学院久我山の常連校たる勝利のメンタリティは消えていないと感じた。
試合を自力で挽回できる点が、成城にはない伝統と継続の重みだと感じた。




一方、成城の花園初出場のチャンスは限りなく高い試合だった。展開は全てハマっていたし、こういう流れは毎回起こせるモノではないと思う。
PGの決まる/決まらないはツキの側面もあるが、残念ながら、最後の最後で神様は微笑んでくれなかった。

試合終了後、成城の選手たちは泣き崩れる者もいたが、意外と上の空で呆然と佇む者も多かった。
失うモノが何もない戦いぶりだっただけに、結果的に何も得られなかったときの喪失感も、観衆の想像できないところにあるだろうか。
今はただ、試合後に送られた暖かい拍手に癒されて、新たなるスタートへの糧を掴んでくれる事を祈りたい

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