『月刊群雛 (GunSu) 2014年 11月号 ~ インディーズ作家を応援するマガジン ~』 鷹野凌(編) Rebis(著) 神楽坂らせん(著) 竹島八百富(著) 米田淳一(著) 初瀬明生(著) 塩川剛史(著) 笠井康平(著) 青海玻洞瑠鯉(著) 志村一隆(著) 長鳥たま(著) 婆雨まう(著) 王木亡一朗(著) 宮比のん(ロゴ) Yuki TANABE(デザイン) 晴海まどか(編) 竹元かつみ(編)著
突然ではございますが、当方が参加させて頂きました、月刊群雛11月号各作品の感想を手短に記したいと思います。
ご一読する前の参考になれば幸いです。
①Rebis『商業誌からインディーズへ!「あにめたまえ!天声の巫女」が切り開いた道』
連載打ち切り後、自らの手で連載継続の道を探り、インディーズ作家として再び作品を檜舞台へと辿り着いたRebis氏へのインタビュー記事。「とにかくこの漫画を書き続けたい」という強い意志に心打たれますね。かっこいいぜ!
個人的な意見ですが、苦境に立たされた作者が意志を取り戻し、好きなものと一緒に戦う姿というのは、支援を打ち切られてもなおプレーを諦めない企業スポーツ選手と姿をだぶらせてしまいます。
出版物冬の時代で作者と作品が苦しむ一方、独立というリスクはあるが自分の意志で進めることができる…そんな今の傾向を掴む上でも、非常に興味深いインタビューではないでしょうか。
②神楽坂らせん『異世界構築質問リスト3』
ファンタジー世界をつくるための手引き書。手引き書とはいえ、これ単体を読むだけでも想像力を刺激させられます。原著がアメリカのものということで、自分の中では記述から「中世から近代以前のヨーロッパ史」を想起される箇所がちらほら。世界史の復習をしているみたい。
これを元に、日本版の異世界を作成すると、どうなるんだろう? とか考えてしまいます。
③竹島八百富『我思う、故に我あり』
ミステリー+ホラーのコラボレーション。テイストとしては「世にも奇妙な物語」に近いのではないでしょうか。作品内容は…と言いたいところですが、本稿の主題を説明する時点でネタバレになりそう(!?)なので、差し控えたいと思います。前半と後半で大きく作品の雰囲気も違うし、あらぬ方向にひねられたラストにも唸らされる。この作品を読み終えたあと、竹島氏の「作品を書いたキッカケは」のインタビューを読み直すと、またまた興味深いところに辿り着きますね。読みきりだけど続きが気になる作品。
④婆雨まう『サラリーマン・エレジー』
出だしから加齢臭漂うサラリーマン小説。紙面から臭いが漂うというのは、それだけ人物のキャラクターや設定がリアルでしっかりしているという事ですね。会長のお山の大将ぶり&手を焼かせる感が好き。主人公二人がこれからどう転落していくのか、そしてそれがどんなスケールで進んでいくのかが気になるところです。
⑤米田淳一『激闘!宇宙駆逐艦』
直球かつ重厚なSF小説。当方が読んだのは10月号と11月号の後半戦のみですので、あらかじめご了承下さい…。という訳で、寸評も2か月まとめたかたちで。好きなシーンを挙げるならば、10月号なのですが(!)、シファにボコボコにやられて、提督はじめ周囲が諦めムードになったところで、艦長がそれを諭すシーン。読者もここでグイグイとモチベーションが上がりますね。
女性型戦艦が本作の主題とは言え、物語を通して貫かれているのは「男らしさ」ではないでしょうか。チヤらくはなく、されど過度にむさ苦しくない、丁度良い「男らしさ」です。
⑥初瀬明生『医者の不養生』
夫を恨む妻の復讐劇。ミステリーではないのですが、ミステリーの姿勢で読むと面白い作品。あえて比較をするならば、竹島氏がシュールであり、初瀬氏はベタな作品テイスト。ベタと言っても先が読める云々ではなく、筋の通ったラストのひねり方が巧いという意味。シンプルイズベストの構成でこれほど良き読後感を得られるということは、それだけ細部まで矛盾なき作品をしっかり書けているという事だと思います。2回目読み直すと更に発見がある。要するに1度で2度美味しい。
⑦王木亡一朗『kappa』
冷めた中学生と謎の転校生、そして河童も絡んでくるオカルト兼青春小説。読後の第一印象、「ああ、懐かしいなあ」。
…懐かしい? いや、俺の学校にはプールも無いし、男子校だし、河童に会った事もない。何が懐かしいと思わせたんだろう?
色々考えてようやくたどり着きました。こういうテイストの小説、受験勉強の問題集で大量に読んでいました(!?)。展開がしっかりしていて、登場人物の心情にメリハリがあって、舞台も小中学生にとってはイメージしやすい。私が国語の先生だったらこれで問題を作りたいくらいですね。
中学生だ受験生だと言ってしまいましたが、作品そのものは当然大人が読んでも先がどんどん先を読みたくなる一品。こういうテイストの作品が好きなのに、自分はぜんぜん出会えていなかったんだなあ…とも痛感。
⑧塩川剛史『走る天使』
自分のやつ。特に言いたいことは無いんですが、自分はわりとスローテンポの作品を書いたつもりです。なので、次の笠井氏のテンポが速い作品との落差にやられた読者がいないか心配です。出稿順掲載の妙や!
⑨笠井康平『識字率と婚姻のボトルネック』
ある一家の様子を描いた小説。一番読み返した作品。というのも、一読しただけでは掴みきれない情報量と展開力だったからであります。主人公や場面に対してずーっと1台のカメラを回している、映画やTVドラマ的ではない視点。例えるならば、各々の登場人物の頭上にCCDカメラが取り付けられていて、そこから見える映像をモニタールームにいるディレクターがランダムにカチカチと切り替えて映像作品にしているいる…そんな感じの文体。
それが掴みきれない部分でもあり、圧倒されてしまう部分でもある。自分の中では1番真似できない作品だとも思いました。
⑩青海玻洞瑠鯉『Moulin Rouge』
4編の詩集。みなさん同じ感想を抱いているとは思いますが、いやあ、エロいですね…笑詩と言っても歌詞へのインスピレーションを受けているインタビュー内でおっしゃられていましたが、ジャズのリズムに合いそうな感じがしました。男の視点、女の視点とそれぞれありますが、それぞれの語り口もキャラが立っていて面白い。
11 志村一隆『コンテンツとビジネスと──アジアの片隅で』
海賊版の現状を踏まえ、コンテンツが生き残る道を探るビジネス評論。池波正太郎風ビジネス評論というモチーフに思わず「なるほど」。終わりそうに無い海賊版と戦うくらいならば、また新しいビジネスを生み出すパラダイムシフトが必要では?という筆者の提言にも頷いてしまう。自分にも色々と思い当たる節がある。ニコニコ動画のMADやマッシュアップでPerfumeのファンになった。でも、最近見たアニメのMADは沢山見てきたが、そのもののコンテンツにお金を落としたことは殆どない。うーむ、以前ほどCDやDVDというコンテンツに興味が無くなっている。
コンテンツを楽しむ身としても、しがないコンテンツを生み出す身としても、どうパラダイムシフトするかは悩ましい問題ですね。
表紙 長鳥たま
作品読む&見る前に著者のGoogle+ページにお邪魔して人となりを確認するのですが、著者本人のキャラと出来上がった作品の差異に腰を抜かしました…いや、もっとポップな表紙が来ると思っていたので…汗女の子の目力にグッときますな。
そんな訳で、フィクションをほとんど読まない僕がフィクションを批評しても良いのかと思いつつ、ずけずけ書かせて頂きました…お許しください!
まあ、12月号は参加しませんが、またレビューは細々と続けたいと思っておりますよ!
ではでは…
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