2015年3月30日月曜日

【ラグビー】僕と平とニコニコ動画 #kdp60


写真は2010年11月のロシア戦のもの


日本有数の強豪ラグビーチーム、サントリーサンゴリアスに所属する平浩二が今シーズン限りでの現役引退を表明した。日本代表ではジョン・カーワン、サントリーではエディ・ジョーンズという二人の指揮官から厚い信頼を寄せられていた名センター。そのルックスも相まって女性ファンの人気も高かった。

さて、平と言えば2007年のW杯・フランス大会を思い浮かべるファンも多いだろう。ボルドーで行われたカナダ戦、大会3連敗中の日本代表は5-12の7点ビハインドでアディショナルタイムを迎えた。当時その試合をテレビで見ていた僕は、一進一退の攻防に熱くなり、深夜にも関わらず眠気を吹き飛ばすほどの応援をしていた。

ハレ・マキリのパントがインゴールゾーンを転々とし、それを追いかけた有賀とカナダの選手が衝突。ボールもピッチ外に出てしまったため試合は中断。主審は第4審判と無線を通して、判定をどうするか確認していた。参ったな、ここで試合が終わってしまったら最悪だ…。

その時だった。急に画面が大西将太郎の顔面を映し出したのだ。呆気に取られているうちに、彼は冷静にコンバージョンキックを成功させた。画面下のテロップは12-12で日本代表がカナダと引き分けた事を伝えていた。

この放送は実は数分ディレイでお送りしており、余りにもロスタイムが長かったため尺に収まらず、泣く泣くトライシーンをカットした。これが某地上波TV局の釈明内容だった。抗議の電話が1000件以上寄せられた一方、私を含め「幻のトライシーン」を探し求め放浪するファンも少なくなかった。

もう一生、あの劇的なシーンは観られないのだろうか…。嘆き悲しんでいた数日後、某巨大掲示板群にて「動画サイトにトライシーンあったぞ」という報告が寄せられた。その動画はYouTubeとは違って会員制らしい。しかも、無料会員だと視られる時間は限られているみたいだ。会員制だなんて、怪しいサイトなのだろうか? あまりスポーツ動画がある雰囲気でも無い。恐る恐る登録し、やり繰りして視聴時間帯を確保した僕は、遂にトライ前後のシーンを通して観ることが出来たのだった。

かくして、僕は平浩二のお陰で熱狂的なラグビーファンになり、かつ平浩二のお陰で重度のニコニコ動画ユーザーになった。たった1本のトライが泥臭いスポーツと柔らかいサブカルチャーを結びつけるのだから、スポーツが持つ運命性はやはり不思議なものである。

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※本作は「KDP作家版 深夜の執筆60分一本勝負」 お題「平」の参加作品です

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