色々と思うところはあると言えばあるが、今回はその点を全て無視して(!)話を進めたいと思っている。少なくとも、それが原因でこの企画に対して熱が冷めるということは無い。
今、「このセルパブがすごい!」という企画が進んでいる。
簡単に説明すると、セルフパブリッシング(自己出版)を楽しんでいる方々が「これだ!」と思う同志の本を5冊選び、投票するというものである。イメージとしては元ネタである「このミステリーがすごい!」や「キネマ旬報ベスト10」に近い。順調に行けば8月上旬に本として刊行されることだろう。
初めてこの構想を目にしたとき、僕は「絶対に参加したい!」と思った。実際に早い段階で投票している。
なぜ、この企画に乗ったのか。それは、セルパブ業界に足りなかった「評価軸」が1本増えることへの喜びがあるからだ。
例えば、スポーツには様々な評価軸がある。
一人のバッターの個人成績を見ても打率、本塁打、打点、安打数、盗塁数、四死球数、出塁率…etc 最近はセイバーメトリクスなる指標も現れた。
このような様々な指標があるからこそ、「良い野球選手とは」を多面的に知ることができる。ホームランを打つのが得意な選手がいれば、盗塁で魅せる選手もいる。評価の軸は異なれど、どちらもとても素晴らしいプレーヤーだ。そして、記録と記憶の両面を掛け合わせながら、野球ファンたちは彼らのことを語り合うことができる。
スポーツに明快な基準がある一方、芸術ではそれを設けることが難しい。なかなか数値化できない世界であるがゆえに、致し方ない。
その代替として権威ある者が「賞」をつくったり、「売上」というビジネスのフィールドに置くことで無理やり数値化するという手が用いられている。
さて、現在のセルフパブリッシング界ではどのような評価軸があるだろうか。
例えば「売上ランキング」を思い浮かべる人がいるだろう。しかし、このランキングを「セルフパブリッシング」というカテゴリーでソートすることは難しい(BOOK☆WALKERは頑張っているけど)。やはり商業本に埋もれてしまうのが現状だ。
もう一つは「レビューの星の数」というものがある。
仮に1冊しか売れていない本があっても、最大級の賞賛が記されたレビューが掲載されていれば、作者も読者も救われる結果となる。
だが、このレビューも厄介なものである。昨年発生した「レビュー禍」も記憶に新しい。そして、同業者どうしでレビューをするのが躊躇われる風土が築かれてしまった。ただでさえ「作家≒読者」の世界なのに、である。
そんな現在の状況に、「このセルパブがすごい!」は風穴を開けてくれるのではないか――
作家の互選という評価軸が生み出した、新たなる良書探索機能。特に、「異なるクラスタ」がこの場を通して接する可能性があることに、僕は今、とてつもない可能性を感じている。
藤崎ほつま氏がこの企画のとりまとめ役となり、集計及び出版に向けた動きが着々と進んでいる。
僕はいちガヤとして盛り上げることしかできていないが、出版された「このセルパブがすごい!」を早く手に取りたいし、その本から発せられる新たな息吹を感じ取れることを願っている
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