試合前、横河のゴール裏は少し緊張感が漂っていた。
去年は試合前から穏やかな「お祭り」ムードが漂っており、その明るさが試合後に「感動と歓喜」というかたちで爆発してしまった。
ところが、今年は引き締まった空気が漂っているのが伝わってきた。
昨年同様、天皇杯を祝い乾杯しましょうという流れになり、挨拶をしたコールリーダーはこう言っていた。
「今年も勝って、笑って帰りましょう」
笑みはあるけれど、浮かれていない。
本気で勝ちに来ている。
これが去年との空気の違いか。
強い意志を受け止めて、私も試合に臨むことにした。
戦いの構図は昨年と同じく、「5バックで守る横河対ポゼッションで攻めるFC東京」というものだった。
しかし、一点違うところを挙げるならば「横河のDFラインは高め」だということ。
より前で奪って点を取りに行く…という姿勢は伝わるのだが、如何せん奪った後の攻撃がチグハグであり、ターンオーバーされるとFC東京の選手に多くのシュートチャンスをつくられてしまった。
なんとなんとPK阻止!
そんな中、やはり飯塚渉というGKは頼りになる。
前半28分のPKを筆頭に、ありとあらゆる「1対1」のシーンを止めてきた。
横河武蔵野が放ったシュート数は6本に対し、FC東京は36本。
枠内シュート数を数えたら、果たして幾つになるのだろうか。
考えたらゾッとするとともに、こういう舞台に愛され続ける男もいるのだと感心してしまった。
ひたすら耐えて、ひたすら体を張り、無失点で切り抜ける。
奮闘ぶりに横河ゴール裏のチャントも盛り上がっていった。
しかし、何かが物足りない…
攻守がガチガチに固まったまま、何も動かなかった90分間。
結末は延長戦へと持ちこされることになった。
元気にやっているところを久々に見た
FC東京の勝因を挙げるならば、平山と石川の投入が大きかったと感じる。
シンプルに高さで勝負する平山。
全員が疲弊する中で、自分で仕掛ける事が出来た石川。
結局は前者のゴールでリードを奪い、後者のドリブルで横河の攻撃意欲を削いだのが延長戦の勝因となった。
スタメンの90分間が不甲斐なかったとも言いたいところだが…退場者も出す中、FC東京が延長戦でギアを入れ直したのは、やはり地力の差と言えそうである。
延長戦も横河は苦しい試合運びを強いられてしまった。
決して不甲斐なかった訳ではない。
でも、攻撃をシュートで終えられなかったのは、この敗戦の大きな要因だったと思う。
決して横河の選手が不調だった訳でも、FC東京の守備が好調だった訳でも無い。
どういう訳か、最後の最後で動きが重くなっていたのである。
もしかしたら、去年の劇的な戦いが足枷になっていたのかもしれない。
頑張り続けて凌いでいけば、いつかご褒美が舞い降りてくる。
「こんなにシュートを防いでいるのだから…」という気持ちが時折すっと入ってきてしまった。
しかしながら、いくら横河に優しい勝負の神様も、さすがにそこまで贔屓出来なかったという事か…
勝負の楽しさと厳しさを教えつつ、FC東京が順当に天皇杯の2回戦を勝ち上がった。
晩夏のジャイアントキリングと日立台での横綱相撲、そして今年は爽やかだけど悔しい事実を突きつけられた…
天皇杯の横河武蔵野は一味違う。
そして色々な側面から勝負の面白さと厳しさを学ばせてくれる。
来年も本選に向けて厳しい戦いは続くと思われる。
だけれども、もし本選に出た暁には、足枷を外してもう一度彼らを後押ししに行きたい
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