私自身も年明け以降、色々とトラブルに巻き込まれてしまい、ラグビー観戦はできてもアウトプットは中途半端なかたちで終わっていた。
少し心に余裕ができ始めた今、「シーズン回顧」というかたちで、いくつか文章を綴っていこうと思う。
今日は昨シーズンのベストバウトに推したい、TLプレーオフ決勝戦について。
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トライ数のみ考慮すれば、3本対3本の同数である。
そんなサントリーへの励まし言葉が虚しく聞こえるくらい、プレーオフ決勝のパナソニックのパフォーマンスは圧巻だった。
パナソニックにしろサントリーにしろ、トライは全て個人技の要素が強いものだった。
そう考えると、より勝敗を分けた要素となるのが、ベーリック・バーンズが決めた8本のPGである。
もちろん、彼のキック技術があってのこと。
しかし、「個の技術任せ」という事はあまり感じず、むしろ両チームの間には大きな差があると感じた。
何がこの差になったのか?
考えているうちに、どのようにパナソニックはサントリーから「PGを奪ったのか」という疑問が湧いてきた。
そんな訳で、まずはPGを得るまでのプロセス(失敗した1本も含め、合計9本)をざっと振り返ってみたい。
簡単に表でまとめるとこんな感じ。
番号が蹴った位置。青いセルが22mライン内陣地。
二重線がハーフゾーン。太線が10mライン。点線が10mと22mの中間地点
①前半21分 パナ攻撃 ボールキャリアー稲垣に対してサントリー佐々木のホールディング
②前半24分 パナ攻撃 パナのパスをスミスがインターセプト試みるも、ノックオンオフサイド
③前半31分 サントリー攻撃 スクラムから小澤が持ちだすも、ホラニに絡まれノットリリース
④後半8分 パナ攻撃 ラインアウト→田中→バーンズにスミスのレイトタックル PG失敗
→その1分後にバーンズ独走から山田がトライ
⑤後半13分 サントリー攻撃 スミスに対し堀江タックルしターンオーバー→サントリー(畠山?)慌ててオフサイド
⑥後半26分 パナ攻撃 ラックにてオフサイドの反則(スミス?)
⑦後半29分 スミスのキックを笹倉がカウンター パナ攻撃 バーンズの突破に対して青木がノットロールアウェー
⑧後半32分 サントリー攻撃 ホラニのプレッシャーにニコラスとピシがクラッシュ ノットリリース
⑨後半40分 パナ攻撃 山田のランを止め切れず オフサイド
※テレビ映像を確認しながら文字起こしをしました。誤っている点ございましたらご連絡下さい
ブレイクダウンと「自陣からの攻撃」の劣勢
言うまでもなく、ペナルティの大半はブレイクダウンがキッカケとなっている。
本来サントリーが強いとされてきた分野だが、この試合では見事なまでにカモにされてしまった。
また、サントリーが自陣から強気に展開を仕掛けたものの、劣勢に立たされてペナルティを奪われたというケースも半数を占める。
ボールキープでは無く、キックを使っていれば…というたらればも言いたくなる。
準決勝の神戸戦では我慢の守備ができていたが、この試合に関してはその要素は皆無。
「守り急いだ反則」と「攻め急いだ反則」で自らの首を絞めていったのだった。
パナソニックの強みが出た後半29分のPG
この8本のPGからベストを選べと言われると、私は間違いなく⑦を挙げる。
試合展開としてもこの1本はサントリーの反撃ムードを消し去るのに有効な一打だった。
それ以上に、パナソニックの強みとサントリーの弱みが浮かび上がっているのだ。
以前の記事でパナソニックは攻守の切り替え(インテンシティ)が優れていると述べた。
このシーンも、サントリー陣内から苦し紛れに蹴られたキックから、FBの笹倉がカウンターを仕掛ける。
笹倉のランに数名の味方がサポートするのに対し、サントリーのディフェンスラインは未整備のままだった。
高い位置をキープしたがるが故に、守り急ぐサントリー。
これならばペナルティを奪う事も難しくは無い。
サントリーの守備はスミスの個人戦術である
文字起こしをして初めて気がついたのだが、これらのペナルティにジョージ・スミスが予想以上に関与しているのである。
もちろん、ジョージ・スミスはブレイクダウンで仕事をするためにチームに雇われているようなものである。
ブレイクダウン周辺に顔を見せるのは当然のことだ。
そして普段であれば、彼はブレイクダウンでひたすら相手からボールを奪い、サントリーの攻撃の潤滑油となるはずだった。
しかし、違った。
守備の潤滑油が無くなり、更に攻撃の錆付き方はまでも一層酷くなってしまった。
これについては、スミス個人が酷いというよりも、チームとしての問題ではないだろうか。
要するに、サントリーの守備というのは組織立てられたものではなく、結局はジョージ・スミスの個人戦術(=極めてレベルの高いジャッカルの技術)に長い間頼りきっていたのである。
1人の息の根を止めれば、残りの14人は右往左往するのみだった。
パナソニックが今、新たなる黄金時代を築き上げようとしている。
それを我々の前ではっきり示したのが、この試合だった。
2014年も中心選手は健在であり、さらに世界の名将・ディーンズHCを招聘した。
エディ氏とは異なるアプローチで、パナソニックの戦術(特に守備戦術)は磨かれていくことだろう。
新たなるインパクトに、今からワクワクしている。
一方、昨シーズンのサントリーの弱体化を一言でまとめるならば「マンネリズム」に尽きる。
そして、色々あったマンネリズムの1つがジョージ・スミスだった。
シーズン一杯でスミスが去るというのは、本当に1つの時代が終わったのだと感じざるを得ない。
現在の攻撃スタイルをさらに構築させるのか、それとも新たなアプローチで挑むのか。
パナソニックの1強ムードが漂う中、対抗馬としての気概を見せて欲しい
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