2015年1月30日金曜日

【後編】「成長」って、何だ? ~中央大学ラグビー部・2014シーズン総括~



負のターニングポイントが日大戦ならば、正のターニングポイントとなったのは山梨学大戦だった。
前半は交互に得点を重ねる展開だったが、後半は中大のモール攻撃が爆発。トライのほとんどがモールによるものだった。
SHでスタメン出場を果たした加藤はモールの最後方からFWに指示を出し続け、時には相手FWに食ってかかった。FWの真のコントローラーは、最も小柄な選手だった。
52-20で快勝。そして、この試合で蘇った自信が、ホーム上柚木で優勝候補・大東大を撃破するキッカケとなったのだ。




リーグ最終戦の対流通経済大戦、秩父宮は熱気に包まれた。学生中心に始動した「1万人プロジェクト」という動員イベントもあり、普段のリーグ最終戦の倍以上の観衆が詰めかけた。
応援の甲斐もあり中大は攻守に粘り強い戦いを見せたが、惜しくも逆転負け。
それでも「今のラグビー部の成長ぶりならば、大学選手権でも」という期待を抱くには十分だった。





しかし、大学選手権で中大は再び重い現実がのしかかった。

慶大戦は執念のディフェンスに屈し、再戦となった流通経済大戦はリリダムという個の力を抑えられなかった。捲土重来を誓った京都産業大戦だが、相手の強力スクラムが中大の弱点を炙り出した。3戦全敗で勝ち点0。朝日大が勝ち点1を得たこともあり、来季の大学選手権はリーグ戦の5位チームがファーストステージ行きという悪いおまけも得てしまった。

大学選手権を終え、再び思う。10月末から11月に見せた檜山組の「成長」とは、果たして何だったのだろうか。




山北組が4年生中心のリーダーシップ型のチームならば、檜山組は全員が主体的なフォロワーシップ型のチームを目指していた。しかし、春はピッチ内外で方向性を示せず、暗闇の中をさまよう羽目になってしまった。

日大戦後、チームは数日間練習をせずに、徹底的に方向性を話し合ったと様々なメディアが伝えている。ようやく定まった方向性。不安が無くなったチームは生き生きし始めた。

そして、前述の加藤のように、4年生が程良くチームを引っ張りだした。
木上は苦手な守備で体を張り(流経大戦、終了間際のトライ阻止の一撃は今でも泣ける!)、北村は弱いスクラムの8-9を後ろから支え続けた。
檜山主将は自分なりのキャプテンシーでチームを支えた。「主将がいなくても勝てる」というのは、「主将がいなければ勝てない」去年とは異なる素晴らしい変化でもある。
スタンドでは応援担当の4年生の明るい声が響きわたった。
このように、4年生の存在感が急激に増したのが、あの1ヶ月強の期間だった。

しかし、輝きは長く続かなかった。1ヶ月の積み重ねだけでは、毎月毎年継続強化しているチームには歯が立たなかった。それが大学選手権での失速の原因であり、かつ今年1年間で最も後悔しなければならない部分である。

1年間の勝敗数だけみれば、落第は逃れたが全体的には合格点とは言い難い。しかし、山北組とは異なるチームづくりで一定の成功を成し遂げられたことと、1年生を中心に今後を担う選手たちが生まれた事は評価しなければならない。1ヶ月の「成長」が残したものは、決して少なくはない。

何より、檜山組は私がこれまでみた中大ラグビー部の中で、最も「面白い」チームだった。底抜けの明るさと、得られなかったモノへの悔しさを織り交ぜつつ、檜山組は我々の良き思い出としていつまでも残り続けることだろう。

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