2016年4月12日火曜日

【セルフパブリッシング】王木亡一朗『母の上京/悲しみ』〈群雛文庫〉を個人的に解説してみた

毎度おなじみの「インディーズ作家と読者を繋げるマガジン」こと月刊群雛。そんな、群雛文庫にて王木亡一朗さんの短編集が発売されております。


母の上京/悲しみ』 王木亡一朗(著) 蒼真怜(イラスト) 0.9Gravitation(デザイン) 鷹野凌(編)著

いちファンである当方も買ってみたのですが、なんとT編集長の解説が無いではありませんか! 割と解説ページは好きだったので、ちょっとがっかり。
そんなわけで、「無いものは作るしかない」精神に則り、この場を借りて勝手に作品レビューをしてみようと思います。なお、この文章は当方の意見ですので、月刊群雛及び群雛文庫とは何ら関係ないことを予めご了承願います。

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本書に収録されている「母の上京」及び「悲しみ」はそれぞれ2014年に発表された作品である。2013年の年末にセルフパブリッシングデビューした王木氏においては、初期の作品とカテゴライズすることができるだろう(なお、このことを「初期亡一朗」と僕が言っているとか言っていないとかは、それはまた別の話)

王木氏の初期の作品、特に短編小説においては2つの異なるテイストが存在している。「早口」か「ゆっくり」かという、文章のスピード感である。
前者の作品として「明子先生の結婚」や「不揃いのカーテンレール」を思い浮かべる人が多いだろう。スタンダップ・コメディかのごとく、話者がひたすら話し続ける。句点の無い文章がひたすら続き、ちょっとちょっとと思っているうちに話に引き込まれる。良くも悪くも、この「王木節」は読者の印象に残りやすい。

その一方で、この文庫に収録されている両作品のテンポはとにかくゆっくりで、穏やかだ。ストーリー展開も相まって、ドキュメンタリーのナレーションというイメージに近い印象を抱いた。
僕は前者の「王木節」で氏の作品に引き込まれたので、初めて「母の上京」や「悲しみ」を読んだときは驚いた。なんと、こんな引き出しも持っていたとは! という一言に尽きる。そして、胸を引き締められる切なさと、そこはかとなく漂う優しさが混ぜ合わさったストーリーに、またまた引き込まれてしまうのである。

「アワー・ミュージック」までを初期の区切りと考えると、その後に発表された王木作品に変化が見られることにも気がつくはずだ。「夏の魔物」や「秋の夜長」で見せた、ひとつの作品内で「緩急」を織り交ぜる新たなテンポ。ひょっとすると、「緩」のベースになっているのは、群雛誌上で披露したこの2作品だったのではないだろうか。
さてその一方で、本書で王木氏を初めて知った方は別の一冊を手にした時驚くことであろう。そして間違いなく、王木マジックの手玉に取られてしまうと予想している


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こちらはテンポが早い作品集です

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