東日本における多くの人々と同じく、かつて経験した災害に対する記憶が色々と蘇る。それはもちろん、私にとって熊本という場所は、2年前の夏に旅行先として選んだ場所というのも、更に胸を痛める要因となっている。
熊本ではぜひ自然を堪能したい。そう思った僕は阿蘇山へと足を向けた。阿蘇駅からバスに揺れること1時間弱。僕は火山のてっぺんに辿り着いた。火口からもくもくと上がる噴煙に、ただただ言葉を奪われた。
その後はハイキングを楽しんだ。山を下り、目指すは阿蘇火山博物館という場所だ。駅まで戻るバスの時間などを考えると、そこまでにした方が良いだろう。周囲に広がる草原を眺めながら、ひたすら歩く。行きの電車は晴れ間が広がっていたのに、帰りの山道は曇り空だった。少し不安になる。
これまた歩くこと1時間弱。ようやく阿蘇火山博物館に到着した。雄大な山々を、草千里ヶ浜の鮮やかな緑色が包み込む。これに爽やかな水色の青空が揃っていれば、更に素晴らしいコントラストだっただろうに。
パーキングエリアもあったので、そこでアイスクリームを買った。天気と標高の影響もあって少し肌寒かったが、歩き疲れた身としてはこれくらいの刺激は欲しい。ジャージー牛乳の濃厚な風味が口に広がる。
ところで、帰りのバスがこのパーキングエリアに辿り着くにはあと30分ほどあった。アイス1個では暇を持て余す。再び周辺を歩くことにした。
道路の向かい側に気になるものがあった。そこに停められていたのは車では無く、馬だった。
牧場には数頭の馬と、それを取り囲む数組の観光客がいた。社員旅行と思しき数名のサラリーマンたちは、草原を巡る乗馬の手続きをしていた。3世代揃うとある家族連れは、馬と戯れていた。孫娘はずっと怯えて泣いていたのが印象的だった。
一人旅の僕はしばし馬の撮影に努めた。穏やかな表情でじーっとしている。そんなぼんやりとした表情に、思わず癒されてしまった。
そろそろバス停に戻らなければ。そう思った時、ちょうど社員旅行組が乗馬をスタートさせていた。トボトボとしたスピードで、大きな草原を歩んでいく。そんな後姿をそっと撮影した。
次に訪ねるときは、乗馬にチャレンジしようかな……
被害が拡大し、その中に阿蘇の町々も含まれている。そんな話も聞こえてきた。
パーキングエリアの人たちは、美味しいアイスクリームは、そして牧場の馬たちは……色々な想像が膨らむ。
抵抗できないことに対する無力感は小さくない。しかし、サポートすることを放棄してはならない。
その「サポート」の中の一つに、「思い続ける」ことがあっても良いのではないだろうか?
写真の向こう側でぼんやりとしている馬の顔を見ているうちに、そんなところに辿り着いた。
いつかまたあの地を訪ねて、初めての乗馬を試みる。その日に向けて、思いを途切れさせないように心がけたい
◇
平成28年熊本地震の影響により被災された皆さまに、改めて心よりお見舞い申し上げます。
当方もささやかではございますが、募金などによる支援を進めて参ります
・Yahoo!募金
・日本赤十字社
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